企業は、法律に基づき従業員を社会保険・労働保険に適切に加入させる義務があります。
加入漏れや未加入は、企業に対する罰則やトラブルの原因になるため、正しく理解しましょう。
1. 社会保険と労働保険の違い
社会保険と労働保険は、目的や対象が異なる2つの制度です。
📌 社会保険(健康・年金)
✅ 健康保険:病気やケガの医療費を軽減する制度
✅ 厚生年金:老後の生活費や障害・遺族年金を保障
➡ 「社会保険」は、健康や年金の保障を目的とし、原則として企業と従業員が保険料を折半する。
📌 労働保険(雇用・労災)
✅ 雇用保険:失業時や育児・介護休業時の生活を支援
✅ 労災保険:業務中や通勤中の事故・病気の補償
➡ 「労働保険」は、労働者の雇用維持や労災時の保障を目的とし、事業主が負担する場合が多い。
💡 ポイント
社会保険=労働者の生活支援(医療・年金)
労働保険=雇用・労災時の補償
雇用保険は労使折半、労災保険は全額会社負担
2. 各保険の詳細と加入条件
① 健康保険(協会けんぽ・組合健保)
✅ 目的:医療費の負担軽減(窓口負担3割)
✅ 対象:正社員・月額88,000円以上の賃金のあるパート (企業規模等の条件あり)
✅ 保険料:会社と従業員が折半
📌 給付内容
医療費の自己負担が3割に軽減
病気・ケガで4日以上仕事を休んだ場合、傷病手当金が支給
出産手当金・出産育児一時金が支給
💡 注意点
扶養家族(配偶者・子供)も加入可能(ただし収入要件あり)
法人の事業所は強制加入(個人事業主は任意)
② 厚生年金保険
✅ 目的:老後の生活資金、障害・遺族年金の保障
✅ 対象:正社員・月額88,000円以上の賃金のあるパート(企業規模等の条件あり)
✅ 保険料:会社と従業員が折半
📌 給付内容
老齢厚生年金(65歳から受給)
障害厚生年金(障害状態になった場合)
遺族厚生年金(被保険者が亡くなった場合)
💡 メリット
国民年金(基礎年金)より受給額が多い
働きながら加入することで、将来の年金額が増える
③ 雇用保険
✅ 目的:失業・育児・介護休業時の生活保障
✅ 対象:週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある従業員
✅ 保険料:会社と従業員が折半(事業種別で料率が異なる)
📌 給付内容
失業手当(基本手当):失業中に一定期間、手当を受け取れる
育児休業給付金:育児休業中に最大67%の賃金補償
介護休業給付金:家族を介護するための休業時の保障
💡 注意点
週20時間未満のアルバイト・短時間労働者は対象外
雇用期間31日未満の短期労働者も原則対象外
④ 労災保険(全額会社負担)
✅ 目的:業務中や通勤中の事故・病気を補償
✅ 対象:全従業員(パート・アルバイト含む)
✅ 保険料:全額会社負担
📌 給付内容
療養補償給付(医療費が全額補償)
休業補償給付(休業4日目以降、賃金の8割が支給)
遺族補償給付(死亡時、遺族に年金・一時金が支給)
💡 注意点
事業規模に関わらず、1人でも雇用すれば加入義務あり
通勤中の事故も補償対象(通勤災害)
3. 社会保険・労働保険の加入手続き
✅ 企業が行うべき加入手続き
📌 社会保険(健康保険・厚生年金)
1. 日本年金機構または健康保険組合に「新規適用届」を提出
2. 従業員ごとに「被保険者資格取得届」を提出
📌 労働保険(雇用保険・労災保険)
1. 労働基準監督署に「労災保険の成立届」を提出
2. ハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」を提出
3. 従業員ごとに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出
💡 注意点
企業が未加入の場合、過去2年分の保険料を遡及請求される可能性あり
未加入が発覚すると、**罰則(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)**が科される場合がある
4. まとめ(社会保険・労働保険のポイント)
✅ 企業は従業員を社会保険・労働保険に適切に加入させる義務がある
✅正社員・月額88,000円以上の賃金のあるパート (企業規模等の条件あり):社会保険(健康保険・厚生年金)加入対象
✅ 週20時間以上かつ31日以上雇用:雇用保険加入対象
✅ 労災保険は全従業員が対象(1人でも雇用すれば加入必須)
✅ 未加入のままだと企業に罰則や遡及請求のリスクがある
適切な保険加入を行い、従業員の安心と企業の信頼を確保しましょう!