1. 有給休暇とは?
年次有給休暇(年休)とは、労働者が給与を減額されることなく取得できる休暇のことです。
労働基準法により、一定の要件を満たす労働者に対して必ず与えなければならないと定められています。
2. 有給休暇の付与要件
企業は、以下の2つの条件を満たす従業員に対して有給休暇を付与する義務があります。
✅ 継続勤務6か月以上
✅ 全労働日の8割以上出勤している
これらの条件を満たした労働者に、最初に10日間の有給休暇が付与されます。
💡 ポイント:正社員だけでなく、パート・アルバイトも条件を満たせば対象になる
試用期間も勤務期間に含まれる(試用期間3か月+本採用3か月でも有給取得可)
3. 有給休暇の日数(付与スケジュール)
労働者の勤続年数に応じて、有給休暇の日数は増えていきます。
勤続年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
有給休暇の日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
💡 ポイント:
有給休暇の有効期限は2年間(期限を過ぎると消滅する)
6年6か月以上勤務した場合、毎年20日の有給が付与される
4. 2019年の法改正:「年5日取得義務」のルール
2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日以上の取得が義務化されました。
✅ ポイント
会社は労働者が年5日以上の有給を取得するよう管理しなければならない
労働者が自発的に取得しない場合、会社が時季を指定して取得させる必要がある(時季指定義務)
違反した場合、企業に30万円以下の罰金が科される可能性あり
5. 企業の有給管理の義務
企業は、有給休暇が適切に取得されるように管理体制を整える必要があります。
✅ 企業が行うべき対応
1. 有給休暇の取得状況を記録・管理する(勤怠管理システムの活用)
2. 年5日取得の対象者を確認し、取得促進を行う
3. 取得しない従業員には、企業が時季を指定して取得させる
4. 有給休暇の取得ルールを就業規則に明記する
💡 管理方法の例
有給休暇の管理表を作成し、定期的にチェック
「計画的付与制度」を活用し、会社主導で取得を推奨
繁忙期を避けた「有給推奨日」を設ける
6. 計画的付与制度とは?(有給を会社主導で取らせる方法)
会社は、労使協定を締結することで、有給休暇の一部を計画的に取得させることが可能です。
✅ 計画的付与の例
年末年始や夏季休暇に合わせて有給を取得させる
会社が指定した「有給休暇取得推奨日」を設定する
💡 ポイント
計画的付与は、労働者の自由に取得できる5日を除いた範囲でのみ可能
年5日以上の取得義務を満たさない労働者には、計画的付与だけでは不十分
7. 有給休暇の拒否はできる?
💡 基本的に、会社は労働者の有給取得を拒否できません。
ただし、「時季変更権」という権利があり、以下の条件に当てはまる場合のみ、取得日を変更してもらうことが可能です。
✅ 時季変更権の適用条件
その日休まれると業務に支障が出る場合(例:特定の専門職が休むと業務が完全に回らない)
繁忙期で代替要員の確保が困難な場合
⚠ ポイント
業務の都合がつかない場合のみ適用可能(単なる「忙しい」だけではダメ)
有給の取得そのものを拒否することは違法
8. 企業が有給取得を妨害するとどうなる?
✅ 違法となるケース
「有給を取るな」と発言する(取得を妨害する行為)
有給取得を理由に嫌がらせをする
有給を取得した労働者を不当評価する
✅ 罰則
労働基準法違反として企業に30万円以下の罰金が科される可能性がある
💡 対策として、「有給休暇の管理簿」を作成し、取得状況を記録することが推奨される」
9. パート・アルバイトの有給休暇は?
✅ 週の労働時間・日数が少なくても有給休暇は発生する
✅ 付与日数は労働日数に比例する
例えば、週3日勤務のパートタイマーの場合、6か月後に付与される有給休暇は5日間(フルタイムの半分)。
週所定労働日数 | 4日勤務 | 3日勤務 | 2日勤務 | 1日勤務 |
6か月後の有給日数 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
10. まとめ(有給休暇の管理ポイント)
✅ 年5日の取得義務を徹底する(会社が責任を持つ)
✅ 有給休暇の取得状況を記録・管理する
✅ 取得が少ない従業員には計画的に取得を促す
✅ パート・アルバイトにも適切に有給休暇を付与する
適切な有給管理を行い、働きやすい職場をつくりましょう!