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最低賃金の遵守、残業代・深夜手当・休日手当の適正支払い

企業は、労働基準法に基づき、従業員に最低賃金を下回らない賃金を支払い、適正な残業代・深夜手当・休日手当を支払う義務があります。
違反すると、企業は未払い賃金の支払い命令や罰則を受ける可能性があるため、正しい計算方法を理解しましょう。

1. 最低賃金の遵守

📌 最低賃金とは?

最低賃金とは、企業が従業員に支払わなければならない最低限の時給です。
最低賃金を下回る賃金で労働契約を結んでも無効となり、最低賃金以上の額で再計算した差額を支払う義務が発生します。

✅ 最低賃金の種類

1. 地域別最低賃金:都道府県ごとに異なり、毎年10月頃に改定される
2. 特定最低賃金:特定の産業(製造業・建設業など)に適用される、より高い最低賃金

💡 注意点
✅ 最低賃金の対象となるのは「基本給+固定手当」(通勤手当・(固定)残業代・賞与は含まれない)
✅ 最低賃金を下回った場合、企業は差額を支払う義務がある
✅ 未払いが発覚すると、罰則(50万円以下の罰金)や過去2年分の遡及支払い命令が出ることがある

📌 最低賃金の計算方法

時給換算の計算式: (月給 ÷ 1か月の所定労働時間) ≥ 最低賃金

例)福岡県の最低賃金992円(2024年度)
月給200,000円で所定労働時間が150時間の場合
→ 200,000円 ÷ 150時間 = 1,333円(最低賃金クリア)

2. 残業代(時間外労働手当)の支払い

📌 残業代とは?

労働基準法では、1日8時間・週40時間を超える労働を時間外労働(残業)とし、企業は割増賃金を支払う義務があります。

✅ 残業代の割増率

労働時間 割増率 計算方法(時給1,200円の場合)
8時間超の残業 25%増 1,200円 × 1.25 = 1,500円
月60時間超の残業(中小企業は2023年4月から適用) 50%増 1,200円 × 1.50 = 1,800円

💡 ポイント
✅ 残業代は「基本給+諸手当」から算出(通勤手当や賞与は含まない)
✅ 残業の上限は原則「月45時間・年360時間」(特例あり)
✅ 「固定残業代(みなし残業)」を導入する場合は、超過分を別途支払う必要がある

3. 深夜手当(22時~5時の労働)

📌 深夜手当とは?

深夜労働(午後10時~午前5時)を行った場合、企業は基本給の25%以上の割増賃金を支払う義務があります。

✅ 深夜手当の割増率

時間帯 割増率 計算方法(時給1,200円の場合)
22:00~翌5:00 25%増 1,200円 × 1.25 = 1,500円

💡 注意点
✅ 残業と深夜労働が重なる場合は「50%増」(例:深夜の残業なら1,800円)
✅ コンビニ・飲食店・工場勤務など、深夜労働がある業種は特に注意
✅ 深夜労働は「労使協定(36協定)」を結ぶ必要がある

4. 休日手当(法定休日の労働)

📌 休日手当とは?

企業は、法定休日(週1回)に労働させた場合、割増賃金を支払う義務があります。

✅ 休日手当の割増率

労働日 割増率 計算方法(時給1,200円の場合)
法定休日(週1回の休み)に勤務 35%増 1,200円 × 1.35 = 1,620円

💡 注意点
✅ 法定休日とは、企業が「就業規則」で定めた休日とは別(例:日曜日が法定休日の場合、土曜出勤は休日手当の対象外)
✅ 法定休日出勤+深夜労働なら「60%増」(1,920円)
✅ 休日労働が多い業界(建設・運送・小売など)は特に注意

5. 違反した場合の罰則・リスク

違反内容 罰則・リスク
最低賃金未満の支払い 50万円以下の罰金
残業代・手当の未払い 2年分の遡及支払い命令(2020年4月以降は3年に延長)
悪質な賃金未払い 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
労基署の是正勧告 を受けると企業名が公表されるリスクがあります

💡 未払い賃金は、労働者が証拠を持って訴えれば、企業は「遅延利息を含めて支払う義務」が発生する

6. まとめ(最低賃金・手当の適正支払いのポイント)

✅ 最低賃金を下回らないよう給与を設定(通勤手当や賞与は含まれない)
✅ 残業代(1.25倍)・深夜手当(1.25倍)・休日手当(1.35倍)を適正に支払う
✅ 労働時間の管理を徹底し、固定残業代(みなし残業)制度がある場合は超過分を支払う
✅ 未払い賃金の遡及請求は3年分(2020年4月以降)に延長されているため、リスク管理が重要
✅ 労基署の監査や労働トラブルを防ぐため、適正な賃金管理を行う

企業は適正な給与計算と支払いを行い、労働者の権利を守りながら、法令違反のリスクを回避しましょう!