企業が従業員を雇用する際、職場のルールを明文化し、トラブルを防ぐために「就業規則」を作成することが重要です。
特に、従業員が10人以上の企業は「就業規則の作成と労働基準監督署への届出」が義務となっています。
この義務を怠ると、企業は行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
1. 就業規則とは?
📌 就業規則とは?
就業規則とは、企業が従業員の労働条件や職場のルールを定めた規則であり、会社と従業員の双方が守るべき「職場のルールブック」です。
✅ 企業が就業規則を作成する目的
1. 労働条件を明確化し、労働トラブルを防ぐ
2. 従業員が安心して働ける職場環境を整える
3. 企業と従業員の権利・義務を明確にし、公平な職場ルールをつくる
💡 ポイント
労働基準法に基づき、最低限のルールを守る必要がある
従業員が10人以上の場合は作成・届出が義務(労働基準法第89条)
就業規則を従業員に周知しないと、効力が認められない可能性がある
2. 就業規則の作成義務(従業員10人以上の企業)
📌 義務の内容(労働基準法第89条)
✅ 常時10人以上の従業員を雇用する企業は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務がある
✅ 「従業員10人以上」は正社員だけでなく、パート・アルバイトも含む
✅ **10人未満の企業は作成義務なし(努力義務)**だが、作成することで労務管理がスムーズになる
📌 届出の流れ
1. 就業規則を作成する(労働基準法の基準を満たすこと)
2. 労働者代表(従業員の過半数代表者)から意見を聴取する
3. 労働基準監督署に届出をする(意見書を添付)
4. 従業員に周知し、会社全体でルールを共有する
💡 注意点
就業規則を届出しないと「30万円以下の罰金」の対象になる可能性がある
届出後に変更する場合も、労働基準監督署へ再提出が必要
パート・アルバイトを含む「すべての従業員」に適用されるため、内容をわかりやすくすることが重要
3. 就業規則に必ず記載すべき事項(法定記載事項)
📌 労働基準法で義務付けられている内容
就業規則には、以下の3つの項目を必ず記載する必要があります。
必須事項 記載内容の例
① 絶対的記載事項(必ず記載) ・労働時間、休憩時間、休日、休暇のルール・賃金(給与計算、支払方法、締日・支払日)・退職・解雇のルール
② 相対的記載事項(ルールを定めるなら記載) ・定年、退職金、賞与制度・慶弔休暇や特別手当・表彰・制裁のルール
③ 任意記載事項(企業が自由に追加) ・テレワークのルール・副業・兼業の許可条件・ハラスメント防止規程
💡 ポイント
「絶対的記載事項」は法律で義務付けられているため、必ず記載する
会社独自のルール(服装・喫煙・副業・SNS投稿など)を追加してもOK
労働条件の不利益変更(例:給与引き下げ)には労働者の同意が必要
4. 就業規則の周知方法(従業員への説明)
📌 就業規則は「作成するだけ」では不十分!
企業は、作成した就業規則を従業員に周知しないと、法的効力が認められない可能性があります。
✅ 周知の方法(労働基準法第106条)
1. 紙で配布(就業規則の冊子を渡す)
2. 社内イントラネットやクラウド上で閲覧可能にする
3. 従業員向けの説明会を開催し、ルールを周知する
💡 ポイント
従業員がいつでも確認できる環境を整える
「就業規則を読んでいなかった」と言わせないために、説明会を開くのが有効
ハラスメント・コンプライアンス研修とセットで説明すると効果的
5. 就業規則の変更・改定(時代に合わせた見直し)
📌 変更が必要になるケース
✅ 労働基準法の改正(例:育児休業制度の変更)
✅ 働き方改革(例:テレワーク導入、副業解禁)
✅ 企業方針の変更(例:フレックスタイム制度導入)
✅ 変更時のルール
1. 従業員の意見を聴取(労働者代表の同意は不要)
2. 労働基準監督署へ変更届を提出
3. 従業員に変更内容を周知する
💡 ポイント
就業規則を変更する場合、従業員の「意見聴取」は必要だが「同意」は不要
労働条件を不利益に変更する場合は、従業員の同意を得る必要がある
社会の変化に応じて、定期的に見直すことが重要
6. まとめ(就業規則の整備で企業を守る)
✅ 従業員10人以上の企業は「就業規則の作成・届出」が義務(違反すると罰則あり)
✅ 労働時間・賃金・退職のルールなど、最低限の記載事項を明確にする
✅ 就業規則は作るだけでなく、従業員に周知しないと効力が認められない
✅ 時代の変化に合わせて、テレワーク・副業・ハラスメント対策などを追加する
✅ 労働トラブルを防ぎ、企業と従業員の双方を守るために定期的に見直す
適切な就業規則を整備し、労働トラブルを未然に防ぎましょう!
